一般社団法人大分青年会議所
2023年度 理事長
はじめに
私達には、変えてはいけないものと、変えていくべきものがある。 1953年6月、集中豪雨災害が九州北部地方を襲い被災者が100万人を超える甚大な被害をもたらした。故郷を救うために復興に向け尽力する北九州青年会議所を始めとする各地青年会議所の青年たちの姿に感銘を受けた30名の先輩諸氏が集まり、故郷おおいたに日本で46番目となる大分別府青年会議所が産声を上げた。 それから70年、私達の先輩諸氏は社会情勢に合わせ地域課題解決に向け運動を展開し、故郷おおいたに様々な変化をもたらし多くの人の未来を切り拓いてきた。その姿は次の世代また次の世代へと引き継がれ多くの青年に発展と成長の機会を与え続け現在に引き継がれている。 2020年、世界中を未曾有の危機が襲った。人類の経済や生活に多大な影響を及ぼした新型コロナウィルスの蔓延は、時が経つにつれ収束に向かうと思われたが新しい波が来るたびに感染者数が増加していった。私達JCI大分も活動の制限や変更を余儀なくされたが、今自分たちにできること自分たちがやらなくてはいけないことは何なのかを常に模索し手を止めること無く活動を続けて来た。そして2022年、JCI大分は史上最大の挑戦であった第71回全国大会おおいた大会の主管とJCI日本の会頭輩出の二つの大きな挑戦をやり遂げた。しかしこの挑戦はここで終わりでは無い。創立70周年という記念すべき年を皮切りに、今後5年間10年間でLOMがどのように成長するのか、故郷おおいたがどのように変化していくのかは私達のこれからにかかっている。この指標としてJCI大分は「STEAMランドおおいた」という中期ビジョンを策定した。Science(サイエンス:科学)、Technology(テクノロジー:技術)、Engineering(エンジニアリング:工学)、Art(アート:芸術)、Mathematics(マセマティクス:数学)の5つの視点で地域課題に取り組んでいくこのビジョンは、JCI大分がこれまで得てきたパートナーと協働することで地域課題解決を加速させることができる。 先輩諸氏から受け継がれてきたもの、困難な状況にあっても私達を突き動かすものは何なのか。それは「思いやりの心」である。青年会議所の門戸を開く前は、それは周りの目に見える誰かに向けてだったかもしれない。青年会議所はその人の「思いやりの心」の大きさを広げてくれ、まだ見ぬ誰かのために一生懸命になれる人を育ててくれる。本年度もJCI大分は先輩諸氏から受け継いできたこの「思いやりの心」を持った多くのメンバーで溢れている。この心を核として2023年度は故郷おおいたにさらなる変化をもたらすために、以下を基本方針として展開する。
誰もが挑戦できる組織
本年度、JCI大分は自走する組織を目指す。自走する組織では、それぞれが当事者意識を持ち自ら行動し協力し合う。『しなくてはいけない』という気持ちではなく『しよう』『したい』という気持ちを持つことができれば、組織は自ら動き出す。これまでも組織運営の形態は時代に合わせて様々に変化し、2020年から続く新型コロナウィルスの蔓延はそれをさらに加速させてきた。WEB会議などの情報ツールの活用が当たり前になってきた現代だからこそ、今一度メンバー同士の価値観やそれぞれが今置かれている状況を共有しあうことを意識してほしい。JCI大分の事業や運動を作り上げることができるのは各委員会に与えられた特権である。さまざまな職種のメンバーが集うJCI大分だからこそできる多様なアイデアが生まれる仕組みを作っていこう。そして重要なのはそれぞれが作り上げたこの運動を展開していくのは、全メンバーの仕事だという意識を持ちそれぞれが支え合うこと。そうすることで誰もが挑戦できる組織へと成長することができる。 青年会議所には国内外に様々な成長の機会が用意されている。代表的なのが京都会議、サマーコンファレンス、全国大会、ASPAC、世界会議などの各地大会。また、他LOMを参考にすることも成長の機会といえる。JCI大分は全国大会というツールを使えたことそして日本青年会議所の会頭を輩出できたことにより多くの繋がりを得た。これまででは経験することのできなかった新たな成長のチャンスが今広がっている。本年度も多くのメンバーにこの成長の機会を提供していきたい。そのためには情報を与えられるのを待つだけではなく、今までの繋がりを活かし情報を取りに行き、迅速に共有することが重要となる。 本年度もJCI大分を代表し多くの出向者を輩出する。出向者はJCI大分の顔であり、今後、日本そして世界で活躍し、メンバーにさらなる成長へのチャンスの扉を開いてくれる。出向者が持てる力を最大限に発揮し活躍するために、メンバーが出向者と同じく当事者意識を持ち、出向者が自分たちはJCI大分メンバーと常に一緒に活動できているという思いが持てるようにする体制を築いていこう。
人の未来そして地域の未来
『あなたは40歳くらいになったときに幸せになっているイメージがありますか』という問いを諸国の若者に調査し、他国に比べて「ある」と答えた若者が日本が一番少なかったという結果がある。10代から20代前半の若者たちが、40代と言う近い将来に不安を感じている。次代を担う若者たちは地域にとって重要な存在であり、若者たちが将来幸せになる自分を思い描けることは地域の未来に直結すると言える。JCI大分には長年継続している若者たちと地域の未来について考え合う「おおいた活性化ネットワーク」という貴重な事業がある。若者にしか見えない視点があり、近未来の故郷おおいたの発展を担う若者と共に協働できる環境はJCI大分と相互に大きな成長の機会となっている。本年度の「おおいた活性化ネットワーク」は産官学を繋ぐ役をJCI大分が担い、次代を担う若者が地域課題の解決方法を模索することを通じて、若者の明るい未来への道筋を切り拓く場としていこう。 昨年、JCI大分は「STEAMランドおおいた」というビジョンを策定した。STEAMという5つの創造的視点は、地域課題解決の直接的な糸口になる可能性を秘めている。技術は日々進歩し、また地域や人々を取り巻く環境も日々変化している。それに柔軟に対応していけるように、このビジョンも常にアップデートしていく必要がある。JCI大分には多くの業種のメンバーが所属しており、また多くのパートナーとの繋がりを持っている。様々なアイデアを集約し、より精錬されたこのビジョンを市民と共有し協力すれば地域課題解決へ向けまた一歩前進できる。 全国大会を通し私達は協働してくれる多くのパートナーを得ることができた。多くの協力を得る環境が整った今こそ、JCI大分のビジョンを広く市民の皆様に理解してもらい地域の未来を創るための場が重要となる。JCI大分の運動を展開する最大の場となり、おおいたに住み暮らす人々が毎年心待ちにするような、今後5年継続できる事業をJCI大分メンバー一丸となり構築していこう。
希望にあふれる地域を創る
毎年、JCI大分は大分市が主催する大分七夕まつりに2日目のフィナーレを担当する団体として参画し市民へ大きな感動を届けてきた。私達がこの故郷おおいたを代表するまつりに参画することは大きな意義がある。地域のまちづくり団体としての一面ももちろんだが、JCI大分には様々な繋がりから生まれる多様なアイデアを集約させ新しいものを作り出す力がある。全国大会を通しさらに大きく広がったその繋がりは無限の可能性を秘めており、JCI大分の中でも歴史ある七夕まつり事業をさらに飛躍させることができると確信している。本年度は、今までよりもさらに多くの団体・企業と協力し、今まで見る側だった人々を作る側に巻き込むことで多くの人の感動と地域の未来への希望が詰まった七夕まつり事業にする。 大分、九州では毎年のように災害が起こっている。今こうしている間にもどこかで災害が起こり困っている人たちがいるかもしれない。私達には青年としての責任と行動力がある。さらに青年会議所には全国に多くのネットワークがあり、防災に対して多くの前例を学ぶことができる。それを活かし常に災害に備えた体制を築き、困っている人のために迅速に行動できるようにしていこう。 日本の教育はインプットが主体になっており、アウトプットが得意ではない子どもが多いと言われる。インプットが主体となると物事を覚えることが先行しすぎてしまい、アイデアを想像することがおろそかになってしまう。子どもたちがこれからの社会を生きていく上で知識を覚えることはもちろん必要だが、重要なのはその知識を活用し新しいものを作り出すスキルと経験である。多様性豊かな社会では自分自身の価値を認め自分の考えを主張できることと、他の価値観を認める思いやりの心が必要である。子どもたちは楽しいと思ったことを吸収していく柔軟さががあり、無限の可能性を持った地域の希望である。学ぶだけではなくアウトプットの場を作ることで、子どもたちが学んだことできるようになったことを思い切り自慢できる場をつくり、成功の反対は失敗ではなく、挑戦しないことだということを学べる場を作る。
思いを紡ぎさらなる飛躍を
Be Better(より良くする)。これはJCI共通のスローガンである。青年が社会により良い変化をもたらすために発展と成長の機会を提供することが青年会議所のミッションであり最大の魅力であることは言うまでもない。現にJCI大分を卒業した先輩諸氏、今現在所属するメンバーは青年会議所を通し大きく成長し故郷おおいたに変革をもたらしてきた。そして全国大会とJCI日本の会頭輩出という二つを同時にやり遂げた今だからこそ、まだ青年会議所の門戸を開いていない青年に伝えることのできる魅力があるはずだ。青年会議所は40歳までというタイムリミットがある。だからこそ、常に組織はリフレッシュされそこから生まれる多様なアイデアは、時代の流れにより変化する様々な課題をより良い方向に進めることができる。ゆえに会員拡大は青年会議所の根幹を担っておりメンバー全員で取り組むべき最重要事項だと言える。地域の明るい豊かな未来を思い、まだ見ぬ誰かのために一生懸命になれる青年が多ければ多いほど地域に与える変化は加速する。 本年度、JCI大分は創立70周年を迎える。この70年間で故郷おおいたの人口は倍以上に増え、街並みも人々の生活も大きく変化した。JCI大分はこの長きに渡り故郷おおいたの明るい未来のために活躍するリーダーとして歴史を紡いできた。いつの時代もあったのは故郷おおいたそしてそこに住み暮らす人々への思いやりの心であり、それは今でも私達を突き動かす原動力となっており、未来永劫その心は紡いでいかなくてはならない。また、JCI大分は行政や企業、市民をはじめとする様々なパートナーに支えられてきた。これまで協働してきたパートナーに感謝の意を示すとともに、故郷おおいたのさらなる発展に向けよりいっそう強い繋がりを作っていこう。今後80年、100年へと続いていくJCI大分の未来、そして故郷おおいたの明るく豊かな未来を思い描き、多くの青年たちへ地域を牽引するリーダーとしての発展と成長の機会を提供するために、また一つ前進して行こう。
さいごに
私が、大分青年会議所に入会してまだ数年の頃、先輩に言われた言葉がある 「JCは他の誰よりもどこよりも格好いい団体じゃなくちゃいけない。」 その時の私は正直どうすればいいのかよくわからなかったが たしかにJCで地域のために汗水を流して動いている先輩たちの背中は格好良かった。 入会して10年が経ち、やっとその言葉の真意がわかってきた気がする。 今、私はJCとはつくづく「思いやり」を学ぶ場なのだと思う。 自分の「思いやり」の幅を広げるための場だと言ってもいい。 始めは家族や友人、身近な人たちだけに向けられていたものが、 だんだんと地域のためや、まだ見ぬ誰かのためへ一生懸命になれるようになる。 だからこそ、JCはここ故郷おおいたに様々な変化を起こすことができるのだ。 今もJCI大分は、この「思いやり」を持っているメンバーで溢れていると確信している。 昔、私が先輩から言われた格好いいJCがここにある。 さあ、失敗を恐れず挑戦し、さらなる変化を起こしていこう。 不易流行 ひとつの変化が100の未来を切り拓く